【PRRT治療とオクトレオスキャン、Ga-PET】

(1) オクトレオスキャン、Ga-PETの概要:

 神経内分泌腫瘍(NET)を特徴付ける物質に「ソマトスタチン受容体」があります。放射性同位元素を用いた検査法には現在二つの方法が使われています。一つは上記の 111In をソマトスタチン類似体に結合させ、体内で腫瘍部分に集積した 111In の位置をCT画像化する方法(X線CTと区別してSPECT-CTと略称)、これは「オクトレオスキャン」と呼ばれています。現在使われているオクトレオスキャン法はオランダの製薬会社、加速器を使って作成した111In 結合ソマトスタチン類似体(111In-DOTATOC)を空路輸入し、直ちに患者に投与し画像化します。111In の半減期はおよそ60時間です。
 通常のX線を使う CTは体外から放射する細いX線を検出、オクトレオスキャンでは体内で発生するγ線を検出する(SPECT/CT)ので、SPECT/CTの画像はX線CTより劣ります。

 一方、通常のPETではフッ素18(18F)をブドウ糖に結合させた診断薬(FDG)を使います。これはブドウ糖がガン組織に集積する性質を使っています。18Fの半減期は数時間と短いために、病院内に加速器を備え、投与直前に18Fを作って使用します。
  NETの検診では68Ga をDOTATOCに結合したものを使います。68Gaも半減期が短く、病院内で使用直前に作成して患者に投与します。   

 18F および 68Gaは崩壊するときに陽電子(ポジトロン)を放出します。この陽電子は周りに沢山ある陰電子(通常の電子)と結合して、強いγ線に変わります。したがってオクトレオスキャンも68Ga-PETも検出するのは同じγ線で、γ線を検出する装置をシンチレータと言い、X線とは検出器が異なりますが、画像化の原理は同じです。

 68Ga-PETは放射能の半減期が短く、診断に必用な時間は半日程度で済みますので、患者や医師への負担が少ないので、欧米では68Ga-PETによるNETの診断が主流になりつつあるようです。なた日本の病院ではオクトレオスキャンや68Ga-PET診断を行う施設・装置は主要な病院では完備していますので、認可されれば各地で直ぐにでも実施可能です。 


(2) PRRT治療:

 体内放射線治療であるPRRTが奏功するためには、DOTATOCに結合した 90Y または 177Lu が腫瘍に蓄積することが必要不可欠です。このためには 111In-DOTATOCを使ったオクトレオスキャン、または68Ga-DOTATOC を使った Ga-PETによって、予めDOTATOCが腫瘍に蓄積することを確かめておく必要があります。(注: DOTATOCの代わりに類似化合物と使う場合もあります)。DOTATOCが蓄積しない場合には、PRRT治療での奏功は期待できません。またソマトスタチン受容体の有無を生理検査で確かめる方法もあります。生理検査の機会がありましたら、同時に受容体検査もして貰いましょう。 

(3) PRRT治療時の注意事項: 
  PRRTの治療を行うとき、多量のペットボトル水が用意されています。これは蓄積しないで残った放射性物質が腎臓に集積するので、腎臓を痛めないためにできるだけ早く体外へ放出するための「水」です。腎臓を痛めないためにも、頑張って飲みましょう。