【神経内分泌腫瘍(NET)へのPRRTおよびオクトレオスキャン認可に向けて】
  
             
          写真: 左 パープルリボン(PanCan)  右 ゼブラリボン (NET 関係)

(1) PRRTPeptide Receptor Radionucleotide Therapy) はNETの組織がソマトスタチン受容体を持つことを利用し、ソマトスタチン類似物質にベータ線を出す 90Y(イットリウム 90) を化学的に結合させ、これを患部(腫瘍部分)に導く巧みな方法です。

(2) スイスバーゼル大学病院では、日本からの患者も含めて、2011年現在 すでに1000名を超えるNET患者に PRRTによる治療を行っています。

(3)ソマトスタチン類似物質を直接治療薬としているのがサンドスタチン(ノバルティス社)で、すでに日本国内で認可されています

(4) 90Y を結合したイットリウム(90Y)イブリツモマブチウキセタン(商品名ゼヴァリン)およびその診断薬である インジウム(111In)イブリツモマブチウキセタンは「CD20陽性の再発又は難治性の下記疾患、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫,マントル細胞リンパ腫」に対して日本国内で認可されています(バイエル社)。この方法はPRRTと殆ど同じ手法による治療・診断です。

(5) PRRT はゼヴァリンと殆ど同じ手法であり、放射性医薬品の取り扱い法、治療法、診断装置などは、日本の各病院でその技術は完成の域にあります

(6) PRRT の治療薬(イットリウム(90Y)、ルテチウム(177Lu)-DOTATOC)、および診断薬(オクトレオスキャン用: インジウム(111In)DOTATOC)はオランダマリンクロット社で生産されていますが、現在はコビディエン社に吸収合併され、その子会社になっているそうです。本件に詳しい国際医療センター窪田先生によると、コビディエン社には、現在の所日本でPRRTの認可を申請する動きはないようです**。

(7)PRRT、オクトレオスキャンおよび 68Ga-PET は多くの日本の病院に於いて採用可能です。しかし現在の所認可に向けての強い動きはないようです。

(8)認可に向けて: PRRT、オクトレオスキャン、68Ga-PETの認可申請に対して、製薬企業が消極的な現在、先ず専門の医師と患者が連携して申請に向けて動きを始める必要を感じます。
  アフィニトールやスーテントが認可された経緯には患者側からの強い働きかけがあったからと聞いています。  

(9) 筆者も患者側からの認可申請の動きに少しでも力になりたいと希望しています。PanCan に期待するところが大ですが。

(参考−1) PRRTと同じ 90Yを、大きさ約 32ミクロンのマイクロビーズの中に埋め込み、肝動脈化学塞栓術(trancecatheter arterial chemoembolization:TACE) と似た方法で腫瘍の近くに送り込む SIRT(Selective Internal Radiation Therapy )法、さらに5-FU(TS-1)を併用したNET患者治療例も報告されています。ただし対象は肝臓に限られています。

(参考−2) NET関連の診断法、新規治療薬について:
  ・上記(6)の ** : オクトレオスキャンについて、コビディエン社は2010年5月厚労省ホームページによれば「治験計画提出済み」として登録されています。PRRTについては不明。
  ・同じ条件で NETを対象とした治療薬 ストレプトジゾン(商品名 Zanozar、ノーベルファーマ社)も「治験計画提出済み」となっています。認可見込み:2013年9月。 
  ・オクトレオスキャンによる診断法は、インジウム111標識ペンテトレオチド(オクトレオスキャン)によるソマトスタチン受容体シンチグラフィーとFDGPETを用いた消化管ホルモン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍の診断研究 として治験募集が行われています(2012/08/01付け、 国際医療センター)。 
  ・ガリウム68 PET診断は、 ガリウム68標識オクトレオタイドによる腫瘍の画像診断として治験募集が行われています(2011/01/01付け、京都大学)。